有害物質使用特定施設廃止時の調査義務の一時的免除

知識
土壌汚染対策法
#法手続き

ポイント

  • 有害物質使用特定施設の使用を廃止したときに調査義務が発生するが、要件を満たせば免除できる
  • 届出は、すべて土地の所有者等が行うルール
  • 免除中の土地でも「免除要件を満たさなくなったとき」「所定の要件を満たす形質変更をするとき」には調査義務発生
  • 「免除要件を満たさなくなったときの調査」と、「所定の要件を満たす形質変更をするときの調査」は調査対象範囲が異なることに注意
  • 「所定の要件を満たす形質変更をするときの調査」をした土地でも、免除要件を満たさなくなったときは改めて調査が必要になる
調査契機のまとめ
  • 有害物質使用特定施設の使用を廃止したときに調査義務発生
    ※土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがない土地利用方法をする場合は、この調査が免除できる
  • 確認を受けた土地(免除中の土地)が、免除要件を満たさなくなったときに調査義務発生
  • 確認を受けた土地(免除中の土地)で、所定の要件を満たす形質変更をするときに調査義務発生
届出契機のまとめ
  • 免除を受けるときに届出義務発生
  • 確認を受けた土地(免除中の土地)で、土地の利用方法の変更をするときに届出義務発生
  • 確認を受けた土地(免除中の土地)で、所定の要件を満たす形質変更をするときに届出義務発生
  • 確認を受けた土地(免除中の土地)の所有者等の地位を承継するときに届出義務発生

法第3条第1項ただし書の確認を受けた土地は、有害物質使用特定施設があった土地であるため汚染土壌が存在する可能性が高く、汚染のある場所や深さ、帯水層の位置が不明な状態で土地の形質の変更等が行われた場合、地下水汚染の発生や汚染土壌の拡散が起きてしまう恐れがあります。
このため、所定の要件を満たす形質変更時の届出、それを受けての調査命令がセットになっています。

趣旨

有害物質使用特定施設の使用が廃止された場合であっても、その土地について予定されている利用の方法からみて、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがないときは、その状態が継続する間に限り、土壌汚染調査の実施を免除することができます。(法第3条第1項ただし書、第5項及び第6項、通知の記の第3の1(4)①)。
ただしこの場合、人の健康被害が生ずるおそれがないことについて、都道府県知事の確認を要します(通知の記の第3の1(4)①)。

確認申請の手続き

確認の申請は、有害物質使用特定施設の使用が廃止された時点の土地の所有者等が、確認を受けようとする土地について予定されている利用の方法等を記載した申請書を都道府県知事に提出して行います。

なお、確認する土地の範囲を明確にするため、申請書に「有害物質使用特定施設を設置していた工場・事業場であった土地」及び「確認を受けようとする土地の場所」を明らかにした図面を添付しなければならないこととなっています。

調査義務の一時的免除を受けようとする土地の範囲の明示の例
土壌汚染対策法ガイドライン より

確認の要件

都道府県知事は、申請に係る土地が以下の(1)~(3)のいずれかに該当することが確実な場合に、確認(免除)をすることとされています。

(1)引き続き工場・事業場の敷地として利用される場合

この「工場・事業場」は、使用が廃止された有害物質使用特定施設を設置していた工場・事業場と同じものか、又は関係者以外の者が敷地に立ち入ることができないものに限られ、例えば以下の場合が該当します。

  • 引き続き同一事業者が事業場として管理する土地の全てを、一般の者が立ち入ることができない倉庫に変更する場合
  • 同一敷地内において同一事業者が、有害物質使用特定施設とそれ以外の施設の両方を有して事業場として管理していた場合に、有害物質使用特定施設を廃止して更地とし、有害物質使用特定施設以外の施設で引き続き事業を行う場合
  • 同一敷地内において同一事業者が、有害物質使用特定施設とそれ以外の施設の両方を有して事業場として管理していた場合に、有害物質使用特定施設を廃止し、その跡地に有害物質使用特定施設又はそれ以外の施設を新設し、新設した施設と従前の有害物質使用特定施設以外の施設を用いて引き続き事業を行う場合
  • 有害物質使用特定施設を使用した事業が継続されるが、土地の占有者が変更される(名義変更のみで有害物質使用特定施設が承継される)場合
  • 有害物質使用特定施設を廃止し、新たな施設を設置するまでの間、更地として社内保有し、管理する場合(新たな施設の設置時期は明確であるものとする。)
  • 有害物質使用特定施設を廃止し、譲渡等による土地の所有者の変更後、新たに施設を設置し、工場・事業場としての管理がなされる場合

 

なお、「使用が廃止された有害物質使用特定施設を設置していた工場・事業場と同じ」であれば、「関係者以外の者が敷地に立ち入ることができる」としても確認の要件に該当します。
例えば、一般の者も立ち入ることができる大学の敷地について、有害物質使用特定施設である研究施設が廃止された後に、引き続き大学の敷地として用いられる場合が該当します。

 

(2)事業用建物と住居が一体で、建物設置者が住み続ける場合

小規模な工場・事業場において、事業用の建物とその設置者の住居とが同一(又は近接設置)で、かつ、住居に当該設置者が住み続ける場合です。
「小規模な工場・事業場」とは、事業用の建物が住居と比較して著しく大きいことがなく、工場・事業場の敷地のごく一部に住居があるのではなく工場・事業場と住居が一体として設置されているような規模の工場・事業場をいいます。
いわゆる町工場などが該当する場合が多いです。

 

(3)鉱山関係の土地の場合

下記のような土地が該当します。

  • 操業中の鉱山
  • 操業中の鉱山の附属施設の敷地
  • 鉱業権の消滅後5年以内の鉱山等の敷地

 

これらの土地は基本的に鉱山保安法(昭和24 年法律第70 号)に基づき、土壌汚染による人の健康被害の防止のための措置が行われることから、法に基づく調査義務を一時的に免除することができることとされています。

確認後の手続き

確認(免除)を受けた後は、以下の(a)または(b)に該当する場合に、届出が必要になります。

(a)土地の利用方法の変更をする場合

免除中の土地の所有者等は、その土地について予定されている利用方法の変更をしようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事に届け出る必要があります。
届出には「利用の方法を変更しようとする土地の場所」の情報も必要になりますが、これは土地の範囲を指します。

また確認の申請のときと同様に、「有害物質使用特定施設を設置していた工場・事業場であった土地」及び「確認を受けようとする土地の場所」を明らかにした図面の添付が必要になります。

(b)土地の所有者等の地位を承継する場合

所有権の譲渡、相続、合併等により、「土地の所有者等」に変更があったときは、新たな土地の所有者等は、確認を受けた土地の所有者等の地位を承継することになります。
これに伴い、確認を受けた土地の所有者等の地位を承継した者は、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出る必要があります。

「確認を受けた土地の所有者等の地位」とは、調査の実施を免除されること、上記(a)の土地の利用方法の変更の届出を行うこと、確認が取消された場合に土壌汚染状況調査及び報告を行うこと等とされています。

確認の取消し

都道府県知事は、確認後の手続きにある届出により、その土地が確認(免除)の要件を満たさないと認めるに至ったときは、遅滞なく、当該確認を取り消し、その旨をその時点における土地の所有者等に通知することとなっています。

確認が取り消された場合には、その時点における土地の所有者等に、土壌汚染状況調査及びその結果の報告の義務が改めて生ずることとなります。

確認を受けた土地の形質の変更

免除中の土地の所有者等は、その土地で所定の要件を満たす形質変更を行う場合には、あらかじめ都道府県知事に届け出る必要があります。(法第3条第7項)。

なお、土地の形質変更に伴って土地の利用方法を変更する場合は、法第3条第5項の規定に基づき、あらかじめ都道府県知事に土地の利用方法の変更の届出をしなければなりません。この届出により確認が取り消された場合は、法第3条第1項本文の調査義務が改めて生ずることになるため注意が必要です。

届出の対象となる「土地の形質の変更」の考え方については、こちらをご参照ください。
届出が必要な「形質変更」の要件

法第3条第8項の命令

確認を受けた土地の形質の変更の届出を受けた都道府県知事は、必ず土壌汚染状況調査及びその結果の報告の命令を行い、土地の所有者等に対し、土壌汚染状況調査を行わせることとされています(法第3条第8項)。

ここで、調査の対象となる土地は土地の形質の変更に係る土地であり、法第3条第1項ただし書の確認を受けた土地の全部ではないことに注意が必要です。

また、この命令に基づき調査が行われたことをもって法第3条第1項本文の調査義務(有害物質使用特定施設廃止時の調査義務)が果たされるものではなく、ただし書の確認が取り消された場合には、改めて土地の所有者等は土壌汚染状況調査とその結果報告を行う必要があるということを正しく理解しておくことが大切です。

 

 

 

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この記事は 土壌汚染対策法ガイドライン P.25~32 の内容を主としています。