化学酸化分解

土壌や地下水中の有害物質を、酸化剤を用いて分解・酸化し、無害な物質に変える工法です。

対象物質

VOC(有機塩素化合物)類 テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロエチレン(塩化ビニル)、四塩化炭素、ベンゼン、ジクロロベンゼン等
その他 トルエン、キシレン、エチルベンゼン、鉱物油、多環芳香族化合物、1,4-ジオキサン等

…土壌汚染対策法では特定有害物質に指定されていない物質

原理

薬剤を化学反応させてラジカルを生成し、有害物質をラジカルによって酸化させることで、二酸化炭素や水等の無害な物質に分解します。

反応させる薬剤によってラジカルの持続性(反応時間)に差があります。

フェントン反応の原理

フェントンラジカルの持続性(反応時間)→分単位

過硫酸の反応の原理

過硫酸ラジカルの持続性(反応時間)→日単位

施工方法

不飽和層(地下水位以浅の地層)の土壌汚染に対しては、バックホウによる攪拌、飽和層(地下水位以深の地層)の土壌汚染や地下水汚染に対しては、井戸やボーリング機械による注入を行う場合が多いです。

バックホウによる攪拌

薬剤を水で希釈・散布し、バックホウを用いて土壌と混合します。

化学酸化分解汚染土を仮置する場合はシートを敷いて汚染拡散を防止する

注入

薬剤と水と混合して溶液を作製し、注入井戸やボーリング機械を用いて土壌および地下水中へ溶液を注入します。

化学酸化分解注入

化学酸化分解工法適用までの一般的な流れ

化学酸化分解適用までの流れ

現場条件等により異なりますので都度ご相談ください。

メリット・デメリット

メリット

  • 有機塩素化合物、石油系炭化水素等、各種有機化合物の原位置浄化に適用できます。
  • 反応が早いため分解にかかる時間が短く、浄化完了までの期間が短いです。
  • 施工方法の選択肢が多く、浅層の汚染にも深層の汚染にも対応できます。
  • 「汚染の除去」に分類される工法なので、区域指定の解除が可能です。
  • 掘削除去に比べて安価な場合が多いです。

デメリット

  • 対応できない物質もあります。
  • 化学品を使用するため、土壌や地下水中の環境に影響を及ぼし、元の環境に戻るまでに時間がかかる場合があります。
  • 反応が早い分薬剤の寿命が短く、長持ちしません。
  • 反応時間内に対象物質に薬剤が触れなければ分解しないため、攪拌が難しく浸透しづらい有機質土、粘性土の多い現場では適用できない場合があります。

採用事例

薬剤寿命が比較的長い過硫酸ナトリウムを主成分とする化学酸化剤を使用した事例です。

印刷所跡地で、建物が密集する狭小地でした。掘削除去では高額だったこと、狭小地で大型ダンプの往来が難しかったことがあり、化学酸化分解による原位置浄化を行いました。浄化後はマンションが建設されました。

化学酸化分解事例

化学酸化分解による原位置浄化

掘削と原位置浄化比較
対象物質 ジクロロエチレン、クロロエチレン
最大濃度(土壌) ジクロロエチレン:0.29mg/L(基準値の7倍程度)
クロロエチレン:0.081mg/L(基準値の40倍程度)
最大濃度(地下水) クロロエチレン:0.068mg/L(基準値の34倍)
対策面積 258.5m2
対策土量 797m3(土壌+地下水)
土質 砂~シルト質粘土
施工方法 注入(2mピッチ)