特定有害物質の主な用途と使用業種
土壌汚染対策法に指定されている特定有害物質は、人の健康に被害を生ずるおそれがあるとされる物質です。
しかしその一方で、豊かな生活に役立つ製品の材料としても様々な用途に使用されています。
代表的なものでは、クリーニング等の溶剤、メッキ、医薬品、顔料等があり、使用業種も多岐に渡ります。
特定有害物質の主な使用用途
「特定有害物質」に指定されているものの、セレンは人体に欠かせないミネラルでもあったり、各物質が悪い面だけでなく様々な面を持ちます。「特定有害物質」は医薬品や家電製品など、身近な物から工業用の特殊な物まで本当に多くの用途に使用されています。
分 類 |
特定有害物質の種類 | 用途 |
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第 一 種 特 定 有 害 物 質 |
クロロエチレン | 合成樹脂製造用原料(その加工品は上下水道用のパイプ、電線被覆、窓枠・壁紙等の建材、繊維製品、各種雑貨、農業 用フィルム、医療用器材、生鮮食品の包装材など) |
四塩化炭素 | クロロカーボンの原料、農薬の原料、ふっ素系ガスの原料、 試薬など | |
1,2-ジクロロエタン | 合成原料、フィルム洗浄剤、有機溶剤、殺虫剤、ビタミン抽出剤、燻蒸剤など | |
1,1-ジクロロエチレン | 塩化ビニリデン樹脂(家庭用ラップフィルム、ハム・ソーセージ類を包装する業務用フィルム、人工芝、たわしや人形の髪の毛など)の原料、食品・医薬品包 装用プラスチックフィルムのコーティング材の原料など | |
1,2-ジクロロエチレン | 塩素系溶剤の合成原料、染料・香料・樹脂等の低温抽出溶剤など | |
1,3-ジクロロプロペン | 線虫等を防除する農薬(土壌燻蒸剤) | |
ジクロロメタン | ペイント剥離剤、プリント基板洗浄剤、金属脱脂洗浄剤、ウレタン 発泡助剤、エアゾール噴射剤、低沸点用有機溶剤(不燃性フィルム、油脂、アルカロイド、樹 脂、ゴム、ワックス、セルロースエステル及びエーテル用混合剤)、ポリカーボネートの反応 溶剤、冷媒、ラッカー用、織物及び皮革、香料の抽出、分析用、リノリウム、インキなど | |
テトラクロロエチレン | ドライクリーニング溶剤、フロンガス製造、原毛洗浄、溶剤(医薬品、 香料、メッキ、ゴム、塗料)、セルロースエステルおよびエーテルの混合物溶剤など | |
1,1,1-トリクロロエタン | 金属洗浄剤、ドライクリーニング用溶剤など | |
1,1,2-トリクロロエタン | 塩化ビニリデンの原料、燻蒸剤、塩素化ゴムの溶剤、アルカロイドの抽出剤、染料溶剤、感光剤溶剤など | |
トリクロロエチレン | 代替フロン合成原料、脱脂洗浄剤(衣料のドライクリーニング用、金属機械部品用等)、工業用溶剤、試薬 | |
ベンゼン | 染料、合成ゴム、合成洗剤、有機顔料、有機ゴム薬品、医薬品、香料、合成繊維(ナイロン)、合成樹脂(ポリスチレン、フェノール、ポリエステル)、食品(コハク酸、ズルチン)、農薬(2,4-D、クロルピクリンなど)、可塑剤、写真薬品、爆薬(ピクリン酸)、防虫剤(パラジクロロベンゼン)、防腐剤(PCP)、絶縁油(PCD)、熱媒、塗料、農薬、医薬品など一般溶剤、油脂、抽出剤、石油精製など、その他アルコール変性用 | |
第 二 種 特 定 有 害 物 質 |
カドミウム及びその化合物 | 顔料、電池、合金(原子炉制御剤・ベアリングなど)、メッキ、蛍光体、電子工業など |
六価クロム化合物 | グラビア印刷の写真製版、染料・染色、顔料・塗料・絵具の原料、酸化剤・触媒、マッチ・花火・医薬品などの原料、着火剤、クロム化合物の原料、金属表面処理(クロメート)、皮なめし、防腐剤、分析用試薬、窯業原料、研磨剤、媒染剤、インキなど | |
シアン化合物 | 合成樹脂原料、合成繊維原料、合成ゴム原料、合成原料、工業用反応溶剤、分析用溶剤、合成樹脂発泡剤、重合調節剤、染料原料、農薬原料、試薬、染料、医薬品原料、接着剤原料、還元剤、めっき薬剤、殺虫剤、農薬(殺虫剤)、顔料、顔料原料、殺菌消毒剤、防腐剤、防かび剤、写真・印刷薬品原料、合成樹脂改質剤、界面活性剤原料、香料原料、溶剤、酸化剤原料、染料溶剤、化学兵器原料など | |
水銀及びその化合物 | 試薬、販売禁止農薬(殺菌剤)、医薬品、医薬品原料、触媒、酸化剤、顔料、殺菌消毒剤、爆薬、電池材料、防かび剤など | |
セレン及びその化合物 | 電気・電子材料(コピー機の感光ドラム、太陽電池等)、ガラス着色剤、陶磁器着色剤、ガラス消色剤、ガラス・ほうろう原料、合金の添加剤、セレンが欠乏している地域の土壌改良剤、試薬、触媒、酸化剤、顔料、メッキ処理剤、動物用飼料、半導体製造、医薬品原料、農薬など | |
鉛及びその化合物 | 電池材料(バッテリー、蓄電池等)、はんだ原料、ガラス・ほうろう原料、ガラス・ほうろう添加剤、農薬原料、合成原料、化粧品、染料、塗料、脱色剤、触媒、分散剤、酸化剤、還元剤、防腐剤、合成樹脂用薬剤、めっき薬剤、防さび剤、防かび剤、食品添加物、試薬、肥料、医薬品など | |
砒素及びその化合物 | 合成原料(液晶用ガラス等)、半導体原料、医薬品原料、防腐剤、農薬、染料、顔料、塗料、合金原料、触媒原料、還元剤、試薬など | |
ふっ素及びその化合物 | 合成原料(自動車、半導体製造装置、精密機械、製薬設備、家電、OA機器、調理器具等)、代替フロン原料、農薬原料、医薬品、染料、防腐剤、セメント添加剤、金属表面処理剤など | |
ほう素及びその化合物 | 合成原料(住宅用の断熱材、強化プラスチック用ガラス繊維、液晶ディスプレイなどの特殊ガラス等)、顔料、塗料、触媒、医薬品、化粧品、接着剤、殺虫剤、防虫剤、めっき薬剤、写真・印刷薬品、皮なめし、半導体原料、電気・電子材料、燃料、原子力発電所の制御棒、試薬など | |
第 三 種 特 定 有 害 物 質 |
シマジン | 除草剤 |
チオベンカルブ | 除草剤 | |
チウラム | 殺菌剤 | |
ポリ塩化ビフェニル(PCB) | 変圧器やコンデンサ・安定器などの電気機器用絶縁油や感圧紙、塗料、印刷インキの溶剤など | |
有機りん化合物 | 難燃剤、可塑剤、殺虫剤、農薬など |
特定有害物質の主な使用業種
どのような業種でどの特定有害物質が使用されるのか?を知ることは、こんな施設があった場所だから・・・という予測を立てることができ、その土地の汚染リスクを検討する目安になります。
施設・業種と有害物質の関係は、2012年に環境省が作成した「どのような施設からどのような有害物質が排出されるか」を調査した資料にまとめられています。ここでは、その中からいくつかご紹介いたします。
※この資料作成時はクロロエチレンは特定有害物質に指定されていなかったため、調査の対象外となっています。
業種 | 排水中に含まれる有害物質 |
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医薬品製造業 | 全物質 |
有機化学工業 | 第一種 四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ベンゼン 第二種 六価クロム化合物、シアン化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 第三種 チオベンカルブ、チウラム、有機りん化合物 |
電気めっき業 | 第一種 ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ベンゼン 第二種 カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 第三種 有機りん化合物 |
石油化学工業 | 第一種 四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン 第二種 シアン化合物、鉛及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 |
金属製品製造業、機械器具製造業 | 第一種 ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ベンゼン 第二種 カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 第三種 シマジン、チオベンカルブ、チウラム、有機りん化合物 |
洗たく業 | 第一種 四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン 第二種 鉛及びその化合物、ふっ素及びその化合物 第三種 有機りん化合物 |
ガラス、ガラス製品の製造業 | 第一種 ジクロロメタン、トリクロロエチレン 第二種 カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 |
合成ゴム製造業 | 第一種 1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,2-トリクロロエタン、ベンゼン 第二種 ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 |
新聞業、出版業、印刷業、製版業 |
第二種 六価クロム化合物、ふっ素及びその化合物、ほう素及びその化合物 第三種 有機りん化合物 |
ガス供給業、コークス製版業 | 第一種 ベンゼン 第二種 シアン化合物 |
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この記事は、
環境省 地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル(第1.1版)