地歴調査とは
土壌汚染対策について調べ始めると、必ず出てくる「地歴調査」という言葉。 どんな調査を思い浮かべるでしょうか。
この記事では、地歴調査とは何か、その概要と役割についてわかりやすく解説します。
地歴調査とは
地歴調査は、対象の土地および周辺の土地における過去の利用履歴や有害物質の使用・保管・排出に関する情報を整理し、土壌汚染の可能性を調べる調査です。土壌汚染調査の最初の工程になるため「フェーズ1調査」等とも呼ばれます。法令に基づく調査は、技術管理者(土壌汚染調査技術管理者)の設置と監督が義務付けられた「指定調査機関」により実施する必要があります。
この調査では、土壌の採取や分析は行わず、資料調査・聴取調査・現地調査により基礎情報を取得します。その結果に基づき、調査対象物質の選定や「汚染の由来」の区分を行い、その後の試料採取地点や深さ、調査方法を適切に判断します。
汚染の由来は、地質に起因する「自然由来」、公有水面埋立工法での埋め立て土砂による「水面埋め立て土砂由来」、それら以外に起因する「人為等由来」に分類され、この区分によって適用される法的調査ルールが大きく異なります。
煩雑になるので、この記事では由来として最も多い「人為等由来」の場合に絞って解説します。

法令上の役割
土壌汚染対策法に基づく「土壌汚染状況調査」では、地歴調査を実施して、試料採取の対象となる特定有害物質を特定すること、汚染のおそれの区分(汚染の可能性を分類する)を行うことが求められています。
法令に基づく地歴調査では、指定調査機関が環境省令による方法で調査を進め、結果に基づいて試料採取等の設計を行います。
後続調査の設計根拠
地歴調査による汚染のおそれの区分は、土壌や地下水を採取して汚染の有無を確認する後続の調査について、「どこを・何を・どの程度の密度で調べるか」を決めるための根拠になります。汚染のおそれがないと認められた範囲は、後続の試料採取を省略できます。
調査対象物質の選定
過去の操業内容や取扱物質、保管・排水経路等の情報を踏まえ、全26種類の特定有害物質(第一種〜第三種)の中から、調査の対象とすべき物質を選定します。
調査範囲の絞り込み(深度など)
法4条に基づく「土地の形質変更」を契機とした調査の場合、汚染のおそれがある場所が形質変更範囲より一定以上深い位置にしかないことが認められれば、その区画の試料採取を法的に省略する根拠となります。
土地所有者等にとっての役割
地歴調査を実施することは、法令上の義務を果たすことはもちろん、土地の所有者のリスクを最小化する点においても重要な役割を発揮します。
調査コストの大幅な削減
地歴調査で「汚染のおそれがない」と認められた範囲については、高額なボーリング調査などが法的に不要になります。
スムーズな土地取引/再開発
指定調査機関による公正な報告書は、売買相手や行政に対する信頼性の高いエビデンスとなります。事前にリスクを把握することで、急な取引中止や工事の中断を防ぐことができます。
浄化費用の請求根拠
万が一汚染が判明した際、地歴調査の結果は過去の占有者など汚染原因者に対して浄化費用を請求するための重要な法的根拠となります。
なお、地歴調査では土壌の採取や分析は行わないため、汚染の有無を確定することはできません。地歴調査で把握できるのは、あくまで「汚染の可能性」の評価であり、実際に汚染が存在するかどうかは、後続の表層土壌調査や詳細調査により確認する必要があります。
調査内容
地歴調査では、過去の図面や地図、届出資料などを用いて土地の利用履歴を整理し、資料だけでは把握しきれない情報を関係者への聴取調査や現地調査により補い、それらの情報を総合的に評価します。
1.資料調査(書類で過去を調べる)
対象の土地および周辺の土地における過去の利用状況や有害物質の使用履歴を、地図・空中写真・届出資料などの文献から把握します。原則、1945年(昭和20年)ごろ、あるいは工場開設時まで遡って調べる必要があります。
- 登記簿、地形図、住宅地図、空中写真などによる土地利用変遷
- 水質汚濁防止法等の届出資料、配置図・配管・排水経路、使用薬品リスト・廃棄物関連資料 等
2.聴取調査(人に聞いて補う)
操業関係者や管理者へのヒアリングによって、資料では把握しきれない有害物質の使用状況や過去の作業内容を確認します。
実施内容:- 操業関係者・管理者等から、使用・保管・洗浄・事故・漏洩履歴等を確認
- 記録に残らない規模の事故や漏洩、過去の現場を知る関係者が見聞きしていた事実など資料調査で得られない有効な情報の補完
3.現地調査(実際に現場を見る)
配管・排水口・地下タンク跡などの現場状況を目視で確認し、資料内容との整合性を確かめます。
- 有害物質使用・保管跡、排水口・配管・地下タンク跡、施設配置などの実地確認
- 図面・写真と現況の整合性確認
土地所有者・事業者にとっての活用タイミング
地歴調査によって得られた情報は、土地所有者や開発事業者にとって、資産価値を保護し、実務的なリスクを適切にコントロールするための極めて有用なエビデンスとなります
地歴調査の役割をしっかり理解し、適切なタイミングで活用することで、多方面にわたるメリットを享受することが可能です。
土地の売買や再開発の前に
土地の売買や再開発を予定している場合、事前に地歴調査を実施しておくことで、取引相手や行政に対して土壌汚染に関するリスクの説明が可能になります。
調査を後回しにした結果、契約直前に問題が発覚して取引が中断する、というケースは珍しくありません。早い段階でリスクの全体像を把握しておくことが、スムーズな取引の鍵となります。
工場の閉鎖・移転を検討するときに
有害物質を扱う施設を廃止する際には、法令により土壌汚染状況調査が義務付けられる場合があります。このとき、過去の操業に関する資料や関係者の記憶が散逸する前に情報を整理しておくことが、正確な地歴調査につながります。工場の閉鎖・移転を検討し始めた段階から準備を進めることをおすすめします。
万が一の汚染発覚に備えて
汚染が判明した場合、「誰が汚染を引き起こしたか」の記録が、浄化費用を汚染原因者に請求するための重要な根拠になります。地歴調査は、過去の土地利用や有害物質の取り扱いを体系的に記録として残す作業でもあります。将来的なトラブルへの備えとして、その価値は小さくありません。
調査費用を必要最小限に抑えるために
法に準拠した地歴調査を実施することで、後続の試料採取調査の範囲や対象物質を合理的に絞り込むことができます。結果として、不要な調査を省き、費用を抑えることにつながります。逆に、地歴調査が不十分だと、広い範囲で多くの物質を調べることになり、コストが膨らむ可能性があります。
まとめ
土地の土壌汚染リスクは、見た目では分かりません。しかし、地歴調査を行うことで「土を掘る前に汚染の可能性を把握する」ことができ、調査費用や土地取引のリスクを大幅に減らせます。
地歴調査は、土壌汚染調査の第一段階として土地の過去を丁寧に確認し、汚染の可能性を見極めるための最初の工程です。資料調査・聴取調査・現地調査を通して、後続の土壌調査がどの範囲で、どの密度で必要なのかを合理的に判断するための基礎情報を整えます。
この記事では、地歴調査の概要や役割、主な実施内容についてご紹介しました。土壌汚染対策に向けた第一歩として、地歴調査がどのような意味を持つのか、イメージを持っていただけたでしょうか。 地歴調査のポイントを知っておくことで、土壌汚染対策の全体像がぐっと分かりやすくなります。
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
エコサイクルでは、法に準拠した仕様の地歴調査だけでなく、デューデリジェンスや資産価値評価などの目的・用途にあわせた3種の仕様をご用意しています。
エコサイクルの地歴調査については下記をご参照ください。