活用できていない土地、
“ブラウンフィールド”を抱えていませんか?

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土壌汚染対策法
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土地の売却や再開発を検討する場面で目にする、「ブラウンフィールド」という言葉をご存知でしょうか?さまざまな業界で用いられる言葉ですが、土壌汚染との関係で使われる場合の意味や背景まで理解している方は、意外と少ないかもしれません。

 

この記事では、ブラウンフィールドという言葉の意味と語源から、なぜ今この問題が広がっているのか、どんな課題がありどのような対応策があるのかまで、わかりやすく解説します。

 

活用できていない土地、<br>“ブラウンフィールド”を抱えていませんか?

「ブラウンフィールド」の意味と語源

ブラウンフィールドとは、土壌汚染や地下水汚染の存在、あるいはその懸念によって、開発や活用が進まないまま本来の価値を発揮できずにいる土地のことです。この言葉は、アメリカで工業化が進んだ時代に、老朽化した工業地帯の再開発が社会問題となり、その議論の中で使われ始めたと考えられています。

各国の社会情勢を色濃く反映する用語であるため、国際的に統一された定義は存在しておらず、国や文脈によって指す範囲やニュアンスが異なります。

アメリカと日本、それぞれの定義

アメリカでは2002年に制定された土壌汚染土地支援制度の中で、「汚染物質などの有害な物質が存在する、またはその可能性があることによって、不動産の拡大・再開発・再利用が複雑化している不動産」と定義されています。

ポイントは「複雑化している」という点です。汚染が確定している土地だけでなく、汚染の可能性があることで対応が難しくなっているケースも含まれます。

出典:United States Environmental Protection Agency, “About Brownfields” 

 

一方日本では、環境省が2007年に発表した報告書の中で、「土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い用途、あるいは未利用となった土地」と定義しています。ただし、この報告書に限定された定義であり、日本全体で統一された公式な定義ではありません。

出典:環境省「土壌汚染をめぐるブラウンフィールド問題の実態等について 中間とりまとめ」2007年、P.1 

 

両国の定義に共通しているのは、「汚染が土地の活用を妨げている」という本質的な課題意識です。

日本での典型例

日本でブラウンフィールドになりやすい土地の典型例として、製造業の拠点やクリーニング・印刷・メッキなど各種加工業の工場跡地などが挙げられます。これらの土地は、操業中に土壌や地下水に汚染物質が浸透しているケースが多く、閉鎖後に汚染が判明・懸念されることで活用が止まりやすい傾向にあります。

なお、エコサイクルでは、汚染が確定している土地だけでなく、汚染の可能性があることで対応が複雑化しているケースでも、相談の段階から幅広く対応することが可能です。

なぜ今、
ブラウンフィールドは問題になっているのか

日本各地でブラウンフィールドが問題化している背景には、日本の製造業が直面する構造的な変化があります。

製造業の転換期が生んだ問題

日本では高度経済成長期を通じて、全国各地に多くの工場や事業所が建設されました。しかし、産業構造の変化や製造拠点の海外移転、後継者不足による廃業などを背景に、製造業の事業所数は減少に転じています。

出典:経済産業省「工業統計調査 概況文」2020年、P.1

 

これらの跡地は、汚染リスクが障壁となって活用できない状態に陥ってしまうケースが多くあります。

今後もブラウンフィールドは増え続ける

工場や事業所の閉鎖・移転は今後も続くと見られており、汚染リスクを抱えたまま活用されない土地はさらに増加することが懸念されています。

加えて、日本では人口減少や少子高齢化が進んでおり、特に地方都市では土地そのものへの需要が低下していると言われています。活用されないまま長期間放置される土地が増えれば、ブラウンフィールド問題はより深刻化していくことが予想されます。

欧米諸国でのブラウンフィールド政策の動き

ブラウンフィールド問題は、世界各地で共通の課題となっています。製造業が発展した欧米諸国でも、工業地帯の衰退に伴う同様の問題は古くから存在しており、アメリカでは土壌汚染土地支援制度の制定、欧州でも再開発支援プログラムの整備など、政策的な取り組みが進んでいます。

出典:United States Environmental Protection Agency, “About Brownfields” 

出典:European Commission, “Brownfield redevelopment in the EU” 

 

また、ブラウンフィールドを放置することは、環境面・経済面の両方において悪影響をもたらします。有害物質が管理できていない状態で放置されれば、土壌や地下水の汚染が広がり、周辺環境や住民の健康に影響を及ぼすリスクがあります。経済面でも、本来であれば収益を生み出すはずの土地が活用されないまま眠り続けることは、企業および地域社会にとって大きな損失です。

なぜ土地の活用が止まってしまうのか
仕組みと誤解

土壌・地下水汚染が判明、あるいは疑われるだけで、なぜ土地の売買や活用が止まってしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの構造的なメカニズムがあります。

土地が動かなくなる3つのメカニズム

費用の不確実性

汚染対策にかかる費用は、調査をしてみないと確定できません。「いくらかかるか分からない」という状態では、売主も買主も価格交渉のテーブルにつけず、取引が前に進みません。

結果として、対策費が高額になることを恐れて再開発を断念する場合や、やむなく駐車場や倉庫として最低限の活用にとどめるケースもあります。

買い手・金融機関の回避

汚染リスクのある土地は、買い手から敬遠されやすいのが現実です。金融機関も担保評価が下がることを嫌い、融資に慎重になります。その結果、「売却しても買い手が見つからない」という状況に陥りやすく、開発の流れは自然と汚染のないきれいな土地へと向かいます。ブラウンフィールドだけが取り残され、問題が長期化しやすい構造になっているのです。

情報公開への心理的・実務的な抵抗

土壌汚染対策法に基づいて区域指定を受けると、その土地の地番や汚染物質の種類などが公開台帳に記載されます。社名が直接公開されるわけではないものの、推測されたり、汚染の存在が広く認識されたりする可能性も否めません。こうした点が、企業にとって心理的抵抗となります。

さらに、地域住民や株主などステークホルダーへの説明が必要となる場合もあります。その対応により結果として、調査や対策への着手が遅れ、選択できる打ち手が減ってしまい、ブラウンフィールド化につながってしまうケースも少なくありません。

「完全浄化しなければならない」という誤解

問題をさらに深刻化させているのが、「完全に浄化しなければならない」という過剰な不安です。実際にはリスクに応じた管理で十分に利用可能な土地であっても、活用をためらう状況が生じ、土地活用の停滞を招いてしまう例が少なくありません。

法律が求めているのは「完全浄化」ではなく「適切な管理」です。東京都環境局のガイドブックでも明示されているように、汚染の程度や土地の用途に応じて封じ込めなどの対策を取りながら土地を活用することは、法的に認められた手法です。

 

下図は、東京都において形質変更時要届出区域に指定された土地の件数の推移と、全部解除率を示しています。指定件数は増加している一方で全部解除率は徐々に低下しており、区域指定された状態で土地を利活用している事例が増えていることがわかります。

出典:東京都環境局「環境・経済・社会に配慮した持続可能な土壌汚染対策ガイドブック」第1.02版、P.17

 

さらに下図では、区域指定を受けた土地の現在の用途と、指定された状態で土地を利活用している割合を示しています。基準不適合土壌が存在する土地であっても、健康リスクを回避する措置を行いつつ、適正に管理されたうえでさまざまな用途で利活用されていることがわかります。

出典:東京都環境局「環境・経済・社会に配慮した持続可能な土壌汚染対策ガイドブック」第1.02版、P.18

 

また、環境省の検討会でも「あらゆる場合において汚染の除去を求める風潮は、ブラウンフィールド問題のみならず環境対策の経済合理性の観点からも好ましいものではない」と指摘されています。汚染リスクがあっても、状況に応じた複数の対策を組み合わせることが、現実的かつ合理的なアプローチといえます。

出典:環境省「土壌汚染をめぐるブラウンフィールド問題の実態等について 中間とりまとめ」2007年、P.31 

 

こうした法律と一般的な認識の間にある乖離が、必要以上に問題を大きく見せてしまっているのです。ブラウンフィールド問題における課題の本質は「汚染そのもの」ではなく、「不確実性とコストの壁」、そして「過剰な恐れに基づく認識のずれ」にあるといえるでしょう

ブラウンフィールド問題への対応策

前述したように、ブラウンフィールド問題の背景には、費用や情報公開への不安、そして法律と一般認識のずれといった複数の要因があります。

では、こうした課題に対して、実際にどのようなアプローチが取れるのでしょうか。対応策は大きく4つに整理できます。

① リスクを確定させてから動く

取引が進まない最大の原因は「いくらかかるか分からない」という不確実性です。土壌汚染の調査・対策を専門とする会社が提供するコストキャップ保証などを活用することで、対策費用の上限をあらかじめ確定させることができ、売主・買主ともに安心して価格交渉のテーブルにつくことができます。

② 開発用途を見直す

汚染の除去を前提にした用途にこだわらず、対策コストとバランスを取った用途に変更することで、事業採算が見込めるようになる場合があります。たとえば、住宅開発から物流施設や商業施設への転換など、柔軟な発想が解決策につながります。

③ 汚染付きのまま売買する

土壌汚染対策の専門会社や不動産開発会と連携することで、汚染が残った状態でも土地取引を成立させることが可能です。汚染リスクを適切に価格に織り込んだうえで取引を進める手法も、選択肢の一つなのです。

④ 段階的に対処する

「工場閉鎖は決まったが、完全停止まで時間がある」といった場合や、「工場の閉鎖予定はない」場合でも、操業しながら並行して調査・対策を進めることで、リスクを分散しながら動き出すことができます。東京都環境局のガイドブックでも、操業中の段階から土壌汚染対策を検討・実施することの重要性が明示されています。閉鎖してから慌てて対応するのではなく、操業中から計画的に取り組むことで、対策の選択肢も広がり、コストも抑えられる可能性があるのです。

 

出典:東京都環境局「環境・経済・社会に配慮した持続可能な土壌汚染対策ガイドブック」第1.02版、P.29-30

 

汚染の対処は、高額になりやすい「掘削除去」だけが選択肢ではありません。汚染の種類や程度、土地の用途やコストのバランスを踏まえて、最適な手法を選ぶことが重要です。

エコサイクルでは、微生物の働きで有害物質を分解するバイオ浄化(バイオレメディエーション)や、化学酸化分解、原位置封じ込めなど幅広い対策技術を保有しており、お客様のご状況に合わせて最適な手法をご提案することが可能です。

まとめ

ブラウンフィールドは、適切な知識とサポートがあれば対処の道筋が見える問題であり、土壌汚染は過剰に恐れるものではなく、経営判断として正しく評価すべきリスクの一つです。

解決に向けて最も大切なのは、「早めに専門家に相談し、出口戦略を設計すること」です。汚染の有無が確認できていない段階でも、対応の選択肢は十分にあります。放置する時間が長くなるほど、汚染の拡大リスクや資産価値の低下につながることから、まずは一歩を踏み出すことが、問題解決への最短ルートです。

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エコサイクルでは、汚染付きの土地を売る・貸す・使うといった出口戦略の意思決定をサポートし、実現するソリューションを提供しています。

 

エコサイクルのブラウンフィールドソリューションについては下記をご参照ください。