六価クロムとは?
~水質・土壌の基準値と対策工法~

知識
土壌汚染対策法
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六価クロムは発がん性や皮膚・呼吸器への毒性が確認されており、環境基本法水質汚濁防止法土壌汚染対策法などの複数の法律で基準値が定められています。法令上の規制対象は「六価クロム化合物」と呼ばれる物質群ですが、本記事では読みやすさを優先してこれを「六価クロム」と表記します。六価クロムによる土壌や水質の汚染が見つかった場合や、懸念がある土地を所有されている場合、これらの基準値と対策工法の全体像を把握することが、適切な対応への第一歩です。

 

この記事では以下の内容を解説します。

  •  水質・土壌に関する六価クロムの基準値と改正動向
  •  掘削除去、原位置不溶化など主な対策工法の種類
  •  六価クロムの汚染問題に直面したときにまず取るべきアクション
  •  六価クロムによる地下水汚染の対策事例

 

六価クロムの基本的な性質や有害性についてはこちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。

 

六価クロムとは?<br>~水質・土壌の基準値と対策工法~

六価クロムの基準値と改正動向

六価クロムに関する規制は、一つの法律だけで定められているのではなく、複数の法律が連動して成り立っています。

六価クロムの水質・土壌汚染問題に対応するうえで特に関係するのは、環境基本法水質汚濁防止法土壌汚染対策法の3つです。まず、環境基本法が水質・土壌それぞれの環境基準を「達成すべき目標」として示し、これを受けて水質汚濁防止法が排水規制により水質目標の達成を、土壌汚染対策法が土壌汚染とそれに起因する地下水汚染の調査・対策により土壌・地下水の目標達成を、それぞれ担う形で構成されています。

環境基本法・水質汚濁防止法・土壌汚染対策法の関係性とそれぞれの役割

各法律で定められている基準値(2026年7月時点)

六価クロムに関する基準値は、対象(水質土壌)ごとに次のとおり定められています。水質系の基準は近年見直しが進む一方、土壌系の基準は据え置かれている点に注意が必要です。

 

法律 対象 2026年7月時点
基準値
改正状況
環境基本法 【水】公共用水域・地下水の環境基準 0.02mg/L以下 2022年4月施行で改正(0.05→0.02)
【土】土壌環境基準(溶出量) 0.05mg/L以下 未改正
水質汚濁防止法 【水】地下水浄化措置命令の浄化基準 0.02mg/L以下 2024年4月施行で改正(0.05→0.02)
【水】工場・事業場からの排水 0.2mg/L以下 2024年4月施行で改正(0.5→0.2)
【水】電気めっき業の暫定排水基準 0.5mg/L以下 2024年4月の改正施行時
から3年間適用
土壌汚染対策法 【土】土壌溶出量 0.05mg/L以下 未改正
【土】土壌含有量 250mg/kg以下 未改正
【水】地下水基準 0.05mg/L以下 未改正

 

水質に関する基準値は近年、見直しの動きが進んでいます。環境基本法第16条に基づく「公共用水域および地下水の水質汚濁に係る環境基準」は、新たな科学的知見を踏まえ、2022年4月施行で改正されました。これを受け、水質汚濁防止法に基づく排水基準と地下水浄化措置命令の浄化基準も、2024年4月施行で連動改正されています。なお、電気めっき業については技術的対応に時間を要するとして、暫定排水基準が3年間設けられています。


一方、土壌に関する基準値は、2026年7月時点でいずれも改正されていません。環境基本法第16条に基づく「土壌の汚染に係る環境基準」も、土壌汚染対策法に基づく「土壌溶出量基準・土壌含有量基準」も、いずれも従来の数値を維持しています。また、水質汚濁防止法と同じく地下水を対象とするものの、土壌汚染に起因する地下水汚染を対象とする「土壌汚染対策法上の地下水基準」についても、現時点で改正されていません。なお、直接摂取リスクに対応した土壌含有量基準は土壌汚染対策法のみが定めており、環境基本法に基づく土壌環境基準には含まれません。


このように、六価クロムの基準値は水質を対象とするものについては環境基準・水質汚濁防止法ともすでに引き下げられている一方、土壌を対象とするもの・土壌に起因するものは環境基準・土壌汚染対策法とも改正されていないという非対称な状態にあります。過去にカドミウムやトリクロロエチレン等で水質基準の改正後に土壌基準が改正された前例があることから、土壌系の基準も今後見直される可能性は十分に考えられますが、2026年7月時点で正式な改正告示や公式な改正予告は確認されていません。


現時点で基準値をクリアしている場合でも、将来的な改正によって新たな対応が必要になるケースも考えられるため、動向を注視しておくことが重要です。

出典:環境省「水質汚濁に係る環境基準の見直しについて(お知らせ)」(2021年10月7日発表) 

出典:環境省「環境基本法」第16条 

出典:環境省「水質汚濁防止法施行規則等の一部を改正する省令の公布について 」(2024年01月25日発表) 

出典:環境省「土壌環境基準 別表」 

出典:環境省「土壌汚染対策法施行規則」別表第4 

出典:環境省「土壌汚染対策法施行規則」別表第5 

出典:国立環境研究所「環境基準等の設定に関する資料集」(土壌) 

六価クロム汚染の対策工法

六価クロムの土壌・地下水汚染対策工法は一つではありません。汚染の濃度や範囲、操業状況、対策後の土地の用途、予算などの条件によって適切な工法は異なり、必要に応じて複数の工法を組み合わせて対応することもあります。主な工法は以下の4つです。

 

① 掘削除去

汚染範囲の土壌を掘り出し、敷地外の汚染土壌処理施設へ搬出・処理し、汚染のない清浄土で埋め戻す工法です。工期は比較的短く済む場合が多いですが、環境負荷が高く、汚染範囲や深さによりコストも高くなりやすい特徴があります。

 

② 原位置不溶化(嫌気バイオ不溶化)

土壌を掘り出さず、井戸を作って不溶化剤を注入し、六価クロムが地下水に溶け出さないようにその場(原位置)で不溶化する工法です。掘削除去に比べると低コスト・低環境負荷で、操業中の工場でも対応が可能です。

エコサイクルでは、微生物の栄養源となる不溶化剤を注入して働きを活性化させて、その力で六価クロムを無害な三価クロムに還元する、嫌気バイオ不溶化を採用しています。

 

③ 域外流出防止対策(バリア工法)

地下水の流れに応じて地下水中の六価クロムを回収、不溶化、吸着させることで、敷地外への地下水汚染の流出や上流からの流入を防止する工法です。汚染そのものを除去するのではなく、拡散を防止することを目的としています。この拡散防止目的で揚水を長期にわたって実施している工場は少なくありません。

 

④ 土壌洗浄

汚染土壌を掘削して土壌洗浄プラントに投入し、土壌に吸着した六価クロムを水や溶媒で洗浄する工法です。処理後の土壌は敷地内に埋め戻せるため、敷地外への搬出土量を大幅に減らせるメリットがあります。一方で、専用の洗浄プラントを設置・運用するため、汚染土量が数万m3規模に達してはじめてコストメリットが生まれる点、またプラント設置に数千m2程度のヤードを敷地内に確保できることが前提となる点に留意が必要です。これらの条件が揃う大規模案件で特に有効な工法といえます。

 

六価クロム汚染が確認された場合のアクション

六価クロムが自社の敷地から検出されたり、行政から指摘を受けたりした場合、「まずは何をしたらいいのだろうか?」と悩まれる方が多いのではないでしょうか。

まずは信頼できる専門家を見つけて相談し、ゴールを決め計画を立てていくことが、汚染対応の第一歩になります。

六価クロム汚染に限らずですが、土壌・地下水汚染の対策は、掘削や揚水だけでなく様々な工法があり、どの工法が適切かは、現場の条件によって異なります。さまざまな条件にも法令にも精通した専門家に相談し、条件に合った対策計画を立てることが、適切な対応への近道です。

ですから、パートナーとなる専門家の選定は非常に重要です。六価クロムの対策を考える場合は、次のような観点で事前にHPなどで調べてみることをおすすめします。

 

1.色々な工法を扱っているか

色々な工法を扱っている専門家でないと、土地の条件に合わせた提案をしてもらえません。

2.調査も対策も一貫して実施しているか

土壌汚染の専門会社では、調査のみを行っている企業のほうが圧倒的に多いです。

3.六価クロム対策の実績が確認できるか

同じ土壌・地下水汚染といっても、物質によって挙動も対策プロセスも異なります。六価クロムの対策実績があるかどうかは事前に確認しておきましょう。

 

六価クロムの地下水汚染対策事例

2006年にインド・カーンプル(Kanpur)で、六価クロム汚染に対してエコサイクルが製造するEDC-Mを用いた嫌気バイオ不溶化のパイロット試験が実施されました。

カーンプルはインド北部・ウッタル・プラデーシュ州(Uttar Pradesh)最大の工業都市で、350以上の皮なめし工場が集積しており、多くが未処理の廃液を河川に放流してきました。2003年、市内で約3万人が居住する地区の水道井戸から飲料水基準を超える六価クロムが検出され、住民が汚染水を使い続けざるを得ない状況にあることが確認されました。

周辺住民への健康被害が広く知られた汚染現場として、アメリカのNGOであるBlacksmith財団(現:Pure Earth)の支援を受け、インドの中央公害防止委員会(CPCB:Central Pollution Control Board)の監督のもとでパイロット試験が実施されました。

地層や現場の条件からバイオ不溶化工法が適用可能だったこと、他工法と比べてコストを抑えられることから、EDC-Mを用いた嫌気バイオ不溶化が選定されました。

パイロット試験の結果、注入前の六価クロム濃度は全観測井戸で8.16~12.55mg/Lでしたが、EDC-M注入から約10週間後には全観測井戸でインドの飲料水基準値(0.05mg/L)以下を達成し、嫌気バイオ不溶化の有効性が確認されました。

これは、その土地固有の条件に合わせて工法を選定した結果、効果的な対策が実現できた事例です。

出典:GZA GeoEnvironmental, Inc.「Remedial Pilot Study, Chromium Contamination Area, Noraiakheda, Kanpur, Uttar Pradesh, India」2006年、P1-3,6,11,15 

 

 

まとめ

  • 環境基本法が環境基準(目標)を示し、水質汚濁防止法と土壌汚染対策法がそれぞれの実行を担う構造
  • 水質系の基準は近年強化されたが、土壌汚染対策法の基準は未改正(2026年7月時点)
  • 過去のカドミウムでは水質基準改正の数年後に土壌基準が改正された前例があり、六価クロムも同様の改正が予想される
  • まずは信頼できる専門家を見つけて相談し、ゴールを決め計画を立てていくことが、汚染対応の第一歩
  • 六価クロムの対策工法は複数あり、専門家に相談のうえ土地ごとの条件に合わせて選択することが効果的な対策につながる

 

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エコサイクル株式会社は、EDC-Mをはじめとした自社開発のバイオ浄化剤・不溶化剤を使った原位置対策工事を得意とする土壌汚染対策の専門会社で、六価クロムの嫌気バイオ不溶化にも豊富な実績があります。「嫌気バイオ不溶化が適用できる現場なのか」「他の工法の方が向いているのか」など、まずはお気軽にご相談ください。

丁寧なヒアリングをもとに、何からどう進めるべきかを整理し、最適な対策をご提案するコンサルティングサービスを提供しています。

 

エコサイクルのコンサルティング業務については下記をご参照ください。