嫌気バイオ不溶化とは
嫌気バイオ不溶化は原位置浄化・対策のひとつであるため、原位置不溶化と呼ぶこともあります。微生物の栄養源となる浄化剤を注入し、土中の嫌気性微生物を活性化し、その力で六価クロムなどの重金属を還元不溶化します。エコサイクルの嫌気バイオ不溶化(EDC-M工法)は、六価クロム、鉛、カドミウム、砒素、セレンなど様々な重金属に対応します。
対象物質 | 対象不溶化剤 |
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重金属 |
不溶化メカニズム
EDC-Mによる重金属不溶化メカニズム
1. EDC-Mが酸素を好む微生物を活性化
土壌や地下水の中はふつう一定量の酸素が含まれています。この中に酸素を使って呼吸する微生物がたくさん棲んでいます。これを好気性微生物といいます。EDC-Mはまずこの好気性の微生物を増殖・活性化させます。
2. 酸素の少ない環境へ
増殖・活性化した好気性微生物が酸素を消費するため、酸素が足りなくなってきます。そのため好気性微生物は呼吸ができなくなり今度は減っていきます。次第に酸素が少ない嫌気性と呼ばれる状態へ変化していきます。
3. 嫌気性の微生物が活性化
酸素の少ない環境を好む嫌気性微生物がEDC-Mにより増殖・活性化し始めます。
4. 嫌気性微生物が重金属を不溶化
重金属を不溶化する嫌気性微生物が、地下水に溶けた重金属を不溶化します。不溶化された重金属は、土壌中の鉱物やミネラルに覆われ、さらに溶けにくくなります。これらの重金属は、沈殿したり、土粒子がフィルターとなりろ過されるため、流れてくる地下水は重金属が除去された状態となります。
5. EDC-Mが減少してくると もとの環境に戻ります
EDC-Mが減少すると、①から④までのサイクルが止まりますので、外から入ってくる酸素によって自然に元の状態に戻ります。
採用事例
事例1 地下水の六価クロム不溶化
汚染濃度52mg/ℓを浄化
EDC-M注入後、30日間で六価クロム(初期濃度52mg/ℓ)が環境基準以下となりました。
※2年経過現在も六価クロムに戻ることなく安定しております。
事例2 地下水の鉛不溶化
鉛汚染への適用事例
揚水処理からEDC-Mに切り替えて約1ヵ月で地下水基準以下を達成しました。
揚水処理を継続して実施してきたサイトですが、地下水汚染濃度は一定のところまで下がった後、低減が進まず対策が長期にわたっていました。
EDC-M適用により約1ヵ月で地下水基準以下を達成しました。粘性土を含む複雑な第一帯水層にダブルパッカーを適用しています。
事例3 地下水の六価クロム不溶化
14日間で浄化
EDC-Mを六価クロム汚染地下水(初期濃度0.85mg/ℓ)に注入後、14日後に環境基準0.05mg/ℓ以下となり、21日後に分析検出下限以下(0.005mg/ℓ)となりました。
事例4 土壌の六価クロム不溶化
汚染土壌でも浄化
EDC-Mを六価クロム汚染土壌(初期濃度7mg/ℓ)に注入後、15日目に分析検出下限以下(0.005mg/ℓ)となり、環境基準0.05mg/ℓ以下を達成しました。
※汚染土壌にEDC−M溶解水を加えてシートで覆う簡単な方法で浄化
事例5 海外での地下水の六価クロム不溶化
海外での浄化
EDC-Mを六価クロム汚染地下水(初期濃度11.8mg/ℓ)に注入後、分析検出下限以下(0.005mg/ℓ)となりました。本プロジェクトはインド環境森林省管理下のサイトで行われました。
インドのKanpurは周辺住民に被害を出した有名な公開サイトです。アメリカのNGO、Blacksmith財団からの援助をうけ、インド環境省のもと、このサイトでEDC-Mを適用し、注入45日後に定量下限値以下を達成、浄化効果を出すことに成功しております。 工事施工は水文等に高い専門知識を持つアメリカのGZA社が担当しました。