原位置不溶化は、溶出量基準超過のある土壌に原位置で不溶化剤を供給し、有害物質が地下水に溶け出さないようにその場で不溶化する、管理型の土壌汚染対策です。
対象物質
重金属類 | カドミウム、六価クロム、鉛、砒素、ふっ素等 |
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対象不溶化剤 | NanoLite Earth |
原理
土壌に不溶化剤を供給することで、有害物質が水に溶出しないように処理します。
この不溶化剤にはさまざまな種類がありますが、エコサイクルでは天然鉱物資材やバイオ栄養源等の安全な薬剤を用いています。
バイオ栄養源による原理はこちらをご参照ください。
ここでは天然鉱物資材を用いる場合の代表的な原理をご紹介いたします。
ふっ素の不溶化原理
水溶性の不溶化剤
エコサイクルでは、重金属の化学不溶化に関して注入工法によるアプローチを進めています。
水溶性の不溶化剤を注入し、地下水中のふっ素と反応・結合して水に溶けない形態の結晶を化学的に形成して不溶化します。
不溶化・吸着のイメージ

非水溶性の不溶化剤
短期的反応 |
![]() 水酸化アルミニウムを生成し、表面錯体として、
ふっ素等を速やかに吸着します。 |
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中期的反応 | ![]() マグネシウムと土中のアルミニウムの反応により、層状複水酸化物を生成し、イオン交換によりふっ素等陰イオンを吸着し、表面錯体により鉛、砒素等を吸着します。 |
長期的反応 |
天然鉱物資材による、緩やかな吸着反応が、長期的に継続します。 また、低結晶性粘土鉱物である資材の結晶度が上がるにつれて、重金属が結晶中に閉じ込められます。 |
施工方法
ダブルパッカー注入(水溶性の不溶化剤)
不溶化剤を水に溶かし井戸から注入することで、土壌や地下水中に不溶化剤を拡散させ、ふっ素を不溶化します。注入の方法は色々ありますが、どんな現場にも対応するため、エコサイクルではダブルパッカー注入を多く採用しています。
ダブルパッカー注入とは、ボーリング機で地面に孔を掘り、そこに加圧注入用の二重管を設置し、深度毎に圧力をかけて不溶化剤を注入する方法です。
加圧注入により透水性の低い土質にも対応できること、深度毎に注入が可能で深度を狙って注入可能なことから、様々な現場において有効な注入方法です。

混合攪拌(非水溶性の不溶化剤)
原位置においてスラリー状の不溶化剤を土壌に添加し、スケルトンバケットを装着したバックホウや地盤改良機を使用して混合攪拌します。
攪拌後の土壌は施工前に比べ地盤強度が著しく低下するため、不溶化処理後は固化材を散布し、バックホウで攪拌・地盤改良を行います。固化材が固化することにより地盤強度は回復します。
スケルトンバケット

施工イメージ

不溶化処理と地盤改良を実施した後は、舗装の復旧を行います。
メリット・デメリット
メリット
- 有害物質を土壌に閉じ込めることができるため、移動や拡散が防止できます。
ダブルパッカー注入
- 掘削除去に比べて1/2~1/3程度の低コストです。
- 操業中工場等、建物が残っている状態でも施工可能です。
- 稼働中工場での適用の場合、費用を損金として経費で処理できる場合があります。
会計・税務・法務の取扱いについては、当社が保証するものではありません。貴社にて、専門家と協議の上判断してください
- 重機を使用しない環境負荷の低い工法です。
- 掘削除去や揚水に比べて、大幅にCO2削減可能です。
混合攪拌
- 処理後の土壌を現地に戻すことができるため、運搬・処分の伴う掘削除去に比べ安価で実施することができます。
- 処理工程が比較的単純で、施工期間が短い場合が多いです。
- 天然鉱物資材等による不溶化は、セメント固化による簡易的な不溶化と違い長期的に安定しています。
デメリット
- 汚染の除去には該当しないため、区域指定の解除はできません。
- 有害物質が土壌中に閉じ込められ残留するため、土壌について将来的な利用制限が必要となる可能性があります。
- 有害物質が土壌中に閉じ込められ残留するため、再溶出が起きる可能性もゼロではありません。
- 高濃度の汚染には適用できない場合があります。
ダブルパッカー注入
- 注入工法を適用しにくい粘土層などは、不向きです。
混合攪拌
- 建屋や空頭制限がある場所では適用が難しい場合が多いです。
採用事例
注入によるふっ素の不溶化
水溶性の不溶化剤の注入による不溶化事例です。
不動産開発に伴い、ふっ素の土壌・地下水汚染が確認されましたが、掘削除去、揚水処理では予算に合わず不溶化処理を選択されました。
処理後は自主的にモニタリングをし、基準適合の維持を確認しながら開発を進めました。
地下水における濃度推移

混合攪拌による砒素の不溶化
非水溶性の不溶化剤の混合攪拌による不溶化事例です。
工場敷地の売却に伴って、砒素の土壌汚染対策を希望されていましたが、掘削除去では予算に合わず不溶化処理を選択されました。
処理後は売却が進み、再開発が行われました。

混合攪拌による不溶化

対象物質 | 砒素 |
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汚染レベル | 溶出量基準の数倍程度 |
対策土量 | 740m3 |