域外流出防止対策(バリア工法)

地下水の流れに応じて地下水中の汚染物質を回収、分解・吸着させることにより、敷地下流側への地下水汚染の流出や、上流からの流入(もらい汚染)を防止する工法です。

対象物質

バイオバリア 揚水バリア 透過性地下水浄化壁
VOC(有機塩 素化合物)類 テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、四塩化炭素、ジクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロエチレン(塩化ビニル)等 全種類 全種類
重金属類 シアン、六価クロム、鉛、ヒ素、カドミウム、セレン、銅、コバルト、亜鉛、ニッケル等 全種類 吸着による浄化で適用可能な場合もありますが、技術検討が必要
その他 硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等 基本的に適用可能 適用可能な場合もありますが、技術検討が必要

…土壌汚染対策法では特定有害物質に指定されていない物質

原理

バイオバリア

EDCとEDC-Eを井戸から注入することで微生物による汚染分解ゾーン「EDCバリア」を形成し、地下水汚染の敷地外流出・流入を防ぐことができます。

揚水バリア

帯水層から地下水を汲み上げることにより、地下水汚染の敷地外流出を防ぐことができます。

透過性地下水浄化壁

帯水層の対象範囲に、汚染物質を分解・吸着する材料を混合した混合材料による壁を構築することで、地下水が壁を通過する際に浄化され、地下水汚染の敷地外流出を防ぐことができます。
混合材料には砕石、鉄粉等が多く用いられます。

施工方法

どの工法においても、実施の検討段階で、対象とする帯水層の平面範囲・層厚、透水係数、流向などを把握しておく必要があります。

バイオバリア

浄化剤を水に溶かし、井戸から注入します。
井戸は一般的には、直径50mm程度で、既設井戸も利用できます。

写真提供:株式会社日立プラントサービス

揚水バリア

揚水井戸を設置し、有害物質ごと地下水を汲み上げて、地上の水処理設備で浄化し、放流します。
基本的に帯水層の対象範囲における流量を上回る水量を汲み上げることが求められ、揚水井戸1ヶ所当たりの揚水量と井戸間隔により対象範囲全体を効率よくカバーできるように設計します。

断面イメージ

平面イメージ

環境省 区域内措置優良化ガイドブック(改訂版)より

透過性地下水浄化壁

施工方法はいくつかありますが、代表的な方法は下記の2つです。地下水汚染の濃度・流速等により、砕石や鉄粉等で作る混合材料の配合や壁の厚さを設計します。

(1)壁状の構造物を作る工法

鋼矢板による土留めを設置して、土留め壁の内側を掘削し、混合材料で埋め戻して、浄化壁を作る方法です。

施工イメージ

(2)柱状の構造物を作る工法

オールケーシング工法等で掘削し、混合材料を充填した柱状の構造物をラップするように設置し、浄化壁を作る方法です。

断面イメージ

平面イメージ

施工イメージ

鉄粉混合材埋戻し

表層部は地耐力確保のため粒調砕石による埋戻し

敷均し

メリット・デメリット

バイオバリア

メリット

  • 敷地のサイズ・建物の有無を問わず、地下水汚染の流出・流入防止目的で適用できます。
  • 敷地内で汚染地下水を移動させることがないため配管漏洩による二次汚染等の心配がありません
  • 電気代、水処理、設備部品の交換が不要で、ランニングコストが安価です。
  • 地下水の流れへの影響が少なく、自然の力を活かして分解・浄化するので環境負荷が低いです。
  • 条件に応じて、浄化剤を追加注入することで浄化環境維持をコントロールできます。

デメリット

  • 対応できない物質もあります。
  • 地下水流速が速過ぎる等の現場条件から適用できない場合もあります。

揚水バリア

メリット

  • 広い範囲の帯水層に対して適用可能で、対策コストを低く抑えることができます。
  • 大規模な工事が不要で、敷地境界における比較的狭いスペースで設置が可能です。

デメリット

  • 電気代、水処理等のランニングコストが発生します。また、長期的には設備部品の更新が発生します。
  • 高濃度のVOC汚染源が揚水地点から離れて存在する場合、地下水を介して土壌汚染を拡大させる可能性があります。
  • 敷地内で汚染地下水を移動させるため配管漏洩による二次汚染等のリスクがあります。
  • 地盤沈下が発生するエリアには適用不可となります。

透過性地下水浄化壁

メリット

  • 敷地内で汚染地下水を移動させることがないため配管漏洩による二次汚染等の心配がありません。
  • 電気代、水処理、設備部品の交換が不要で、ランニングコストが安価です。

デメリット

  • 比較的広い施工スペースが必要となります。
  • 地下水汚染の濃度が高い場合、流速が速い場合には施工規模が過大となります。
  • 長期的には分解・吸着能力が低下します。

採用事例

バイオバリア

  • 敷地外への汚染流出防止を最優先事項として、敷地境界近傍にEDCバリアを設けました。
  • 汚染源地点にもEDCを注入し、全体の汚染濃度を低下させ、EDCバリアへの負荷を低減させています。

観測井戸においてVOC濃度を観測

資料提供:東芝環境ソリューション株式会社

  • 敷地外への汚染流出対策としてEDCバリア設置(敷地内は浄化対策中)
  • 全長約400m、深度8~9m

観測井戸においてVOC濃度を観測

揚水バリア

揚水バリアの効果の解析事例です。
揚水井戸により汚染の流出が止まっていることがわかります。